アニメとCGの未来を考える1日 ~産学の現場から学ぶ~

アニメーションやCG制作に携わる企業の実務者や研究者による講演とパネルディスカッションを通じて、歴史的背景から最新技術、制作現場のリアルまで幅広く紹介します。学生・企業・研究者それぞれの立場から学びや気づきを得られる機会とし、アニメとCGの現在と未来を多角的に捉えて理解を深めることを目指します。交流と学びの場として、ぜひご参加ください。

Visual Computing 2025 チュートリアル

  • 日程: 9月7日(日)9:55-18:00
  • 場所: 早稲田大学 西早稲田キャンパス 63号館201-202室
  • ※チュートリアルと本会議は会場が異なります。

プログラム 9月7日(日)

時間 内容 講演者
9:55 - 10:00 チュートリアル開催挨拶
10:00 - 11:00 キャラクタアニメーション技術研究における産学協働の実践と展望 向井 智彦 (東京都立大)
11:00 - 11:10 Coffee Break
11:10 - 12:10 絵コンテから始めるアニメ制作支援 加藤 淳 (アーチ/産業技術総合研究所)
12:10 - 13:30 昼休み
13:30 - 14:30 変遷し続けるアニメ制作 今村 幸也 (東映アニメーション)
14:30 - 14:40 Coffee Break
14:40 - 15:40 2D+3Dハイブリッドアニメ制作の現状とR&D 瀬尾 太, 前島 謙宣 (オー・エル・エム・デジタル)
15:40 - 15:50 Coffee Break
15:50 - 16:50 黒魔法と白魔法で支えるグラフィニカ流3DCGアニメ制作 小宮 彬広, 酒井 邦博 (グラフィニカ) , 小山 裕己 (グラフィニカ/東京大学)
16:50 - 17:00 Coffee Break
17:00 - 17:55 パネルディスカッション 加藤 淳 (アーチ/産業技術総合研究所), 四倉 達夫 (オー・エル・エム・デジタル), 小宮 彬広 (グラフィニカ), 今村幸也 (東映アニメーション)
17:55 - 18:00 チュートリアル閉会挨拶

キャラクタアニメーション技術研究における産学協働の実践と展望

コンピュータグラフィックス研究分野は社会実装との接点が多く、実用化を見据えた産学連携研究が国内でも活発に展開されています。本チュートリアルでは、講師が産学協働の一環として取り組んできたキャラクタアニメーション制作技術の研究事例を通じて、産学双方にとって有益な協働のあり方を考察します。
向井 智彦
東京都立大学システムデザイン学部
https://mukailab.org/

略歴

2006年豊橋技術科学大学大学院博士後期課程電子情報工学専攻修了、博士(工学)。同年同大学情報工学系助教、2009年(株)スクウェア・エニックス主席研究員、2014年東海大学情報通信学部専任講師、2017年同大学准教授、2018年東京都立大学(旧・首都大学東京)システムデザイン学部准教授を経て、2025年より同大学教授。コンピュータグラフィックスに関する研究に従事。

絵コンテから始めるアニメ制作支援

本講演では、アニメの「設計図」と称される絵コンテに注目します。その歴史をたどり、西洋のストーリーボードと比較しつつ、独自性と可能性をひも解き、Webベースの絵コンテ制作ツール「AnimeCraft Storyboard」を紹介します。これはアーチ株式会社で研究開発が始まり、産業技術総合研究所との共同研究を経て、ACM CHI 2024で論文発表された成果です。みなさんもぜひ、アニメづくりを支える研究開発をご一緒しましょう。
加藤 淳
アーチ株式会社/産業技術総合研究所
https://research.archinc.jp

略歴

博士(情報理工学)。2014年より国立研究開発法人産業技術総合研究所研究員、2018年より主任研究員。同年よりアーチ株式会社技術顧問を兼務し、研究開発部門「Arch Research」を設立。2024年度、パリ=サクレ大学に客員科学者として滞在。Human-Computer Interaction全般、とくにクリエイタ向け創造性支援ツールの研究に取り組む。技術移転にも取り組み、一般公開サービスを開発・運営。ナイスステップな研究者2024など受賞多数。

変遷し続けるアニメ制作

さまざまに変化し続けるアニメ制作の変遷を、『プリキュア』の制作史を軸に振り返りながら、実際に現場で指揮を執った経験と実データをもとに多角的に紐解いていきます。さらに、現在の開発業務で培った知見を踏まえ、今後想定されるプロダクションの在り方、そして進化し続ける制作体制の未来の展望についても考察します。
今村 幸也
東映アニメーション株式会社
関連事例

略歴

サンライズにCGデザイナーとして入社し、業界歴をスタート。東映アニメーションではCGプロデューサーとして入社し、現在は製作部のシニアマネージャーと開発責任者を兼任。社内でのデジタル作画ツール開発や育成、業界へのツール配布などを行っている。デジタルタイムシート開発責任者。

2D+3Dハイブリッドアニメ制作の現状とR&D

本講演では、2Dセルアニメ制作に3DCG技術を融合させた「2D+3Dハイブリッドアニメ」制作の実態と展望を探ります。まず、アニメ制作手法と制作現場が抱えている課題、および現在進行中のR&Dの取り組みを、効率化と新しい表現を可能にするDCCプラグインの開発事例を交えながらご紹介いたします。さらに、これらの現状を踏まえた中長期的なR&Dの研究内容についてお話しし、技術開発と現場運用の両面からハイブリッドアニメ制作の実践的な知見を共有いたします。
瀬尾 太
株式会社オー・エル・エム・デジタル

略歴

1996年法政大学経済学部経済学科卒業後、株式会社大和ハウス工業にて営業職従事。ゲーム・映像業界を目指し転身。デジタルハリウッドにて学んだ後、2001年株式会社オー・エル・エム・デジタルに入社。CGデザイナー職を経験の後、2005年からTVアニメ作品においてCGディレクター職に従事。2018年からCGスーパーバイザー職に従事し、ハイブリッド作品のCG全般を統括。
前島 謙宣
株式会社オー・エル・エム・デジタル

略歴

2007年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程単位取得退学。同大学理工学部助手、IT研究機構次席研究員、ミュンヘン工科大学Institute for Cognitive Systemsポスドク研究員を経て、2014年に株式会社オー・エル・エム・デジタルに入社。Head of Researchとして産学連携共同研究の推進に従事。博士(工学、早稲田大学)。2017年より株式会社IMAGICA GROUP Advanced Research Groupのリサーチャーを兼務。芸術科学会、Asia Graphics、ACM SIGGRAPH各会員。

黒魔法と白魔法で支えるグラフィニカ流3DCGアニメ制作

グラフィニカのR&Dは、創造性を解放する「攻めの黒魔法」と、現場を円滑に進める「守りの白魔法」を使い分け、3DCGアニメ制作の現場を支えています。本講演では、スタイル転写技術やゲームエンジンの活用といった独自性の高い「攻め」のR&D事例と、ネットワークレンダリング管理、DCCプラグイン開発、業務効率化のための環境整備など、制作現場を円滑にする「守り」のR&D事例を紹介します。これらを通じて、3DCGスタジオならではの視点や取り組みの狙いを解説します。
小宮 彬広
株式会社グラフィニカ 京都スタジオ代表/技術開発プロジェクト本部長

略歴

2000年から東京でCGデザイナーとして、アニメ・特撮・ゲーム・映画・CMなど様々なCGを手掛ける。
2017年グラフィニカ京都支社を立ち上げ、スタジオ代表に就任。
技術開発プロジェクトの本部長も兼任し、Unreal Engine開発をメインとした開発室を立ち上げ、アニメでのUnreal Engine活用やゲームでのカットシーンワークフロー構築を務める。
2024年9月に公開したスタイル転写の技術論文を実装した実験CG映像「Forest Tale」のR&Dマネージャー及びLookDevリーダーを行い、SIGGRAPH ASIA 2024のTechnical CommunicationsにてBEST PAPER AWARDを受賞した。
酒井 邦博
株式会社グラフィニカ 京都スタジオ 技術開発室

略歴

株式会社グラフィニカ 京都スタジオ テクニカルディレクター。
2000年からゲーム開発などに携わり、幾つかのスタジオなどを経て、2017年からグラフィニカに所属。
現在はBlenderやUnreal Engineなどの研究開発を行う。
小山 裕己
株式会社グラフィニカ/東京大学
https://koyama.xyz/index-j.html

略歴

2021年より株式会社グラフィニカ技術顧問を兼務し、アニメ制作における新しい表現への挑戦や創造性向上のための技術開発に関わる。本務は2025年4月より東京大学准教授。コンピュータグラフィクスとヒューマンコンピュータインタラクション、特に数理手法に基づくデザイン支援技術の研究に従事。Asiagraphics Young Researcher Award (2021), VC Young Researcher Award (2022)など多数受賞。

パネルディスカッション

本企画の締めくくりには、講演者によるパネルディスカッションを設け、アニメーション・CG分野における制作現場の技術的課題やニーズ、そして技術開発が映像制作にもたらす可能性について多角的な視点から議論を行います。
加藤 淳
アーチ株式会社/産業技術総合研究所
https://research.archinc.jp

略歴

博士(情報理工学)。2014年より国立研究開発法人産業技術総合研究所研究員、2018年より主任研究員。同年よりアーチ株式会社技術顧問を兼務し、研究開発部門「Arch Research」を設立。2024年度、パリ=サクレ大学に客員科学者として滞在。Human-Computer Interaction全般、とくにクリエイタ向け創造性支援ツールの研究に取り組む。技術移転にも取り組み、一般公開サービスを開発・運営。ナイスステップな研究者2024など受賞多数。
四倉 達夫
株式会社オー・エル・エム・デジタル

略歴

2003年成蹊大学にて博士号取得。同年より国際電気通信基礎技術研究所(ATR)にてコンピュータグラフィックス研究者として活動。2009年オー・エル・エム・デジタルに入社し、数多くの映像作品制作に携わる。プロダクションエンジニアとしての代表作にポケモン映画シリーズがある。現在は同社R&D部門責任者を務める。また、オー・エル・エム・グループの親会社である株式会社IMAGICA GROUPのアドバンストリサーチグループにおいて研究ディレクターも兼任している。現在は制作現場に寄り添った映像技術の研究開発を推進し、アニメ業界の発展に貢献すべく日々取り組んでいる。
小宮 彬広
株式会社グラフィニカ 京都スタジオ代表/技術開発プロジェクト本部長

略歴

2000年から東京でCGデザイナーとして、アニメ・特撮・ゲーム・映画・CMなど様々なCGを手掛ける。
2017年グラフィニカ京都支社を立ち上げ、スタジオ代表に就任。
技術開発プロジェクトの本部長も兼任し、Unreal Engine開発をメインとした開発室を立ち上げ、アニメでのUnreal Engine活用やゲームでのカットシーンワークフロー構築を務める。
2024年9月に公開したスタイル転写の技術論文を実装した実験CG映像「Forest Tale」のR&Dマネージャー及びLookDevリーダーを行い、SIGGRAPH ASIA 2024のTechnical CommunicationsにてBEST PAPER AWARDを受賞した。
今村 幸也
東映アニメーション株式会社
関連事例

略歴

サンライズにCGデザイナーとして入社し、業界歴をスタート。東映アニメーションではCGプロデューサーとして入社し、現在は製作部のシニアマネージャーと開発責任者を兼任。社内でのデジタル作画ツール開発や育成、業界へのツール配布などを行っている。デジタルタイムシート開発責任者。

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(c) Visual Computing 2025 実行委員会